ゆるキャラは古く良き時代への懐古?~アイドルとお笑い芸人
ふなっしー、くまもんをはじめとするゆるキャラはここ数年大活躍しています。幼児から大人まで大人気のゆるキャラ。地方活性化にも貢献し、引っ張りだこです。どうしてここまでブームになっているのでしょうか?
昔のアイドルと今のアイドル
人気アイドルとなるためには愛されるビジュアル的キャラクターと、歌唱力、カリスマ性が必要です。
80年代は沢田研二、郷ひろみ、キャンディーズ、ピンクレディーにはじまり、松田聖子、中森明菜、近藤雅彦、田原俊彦、シブガキ隊、チェッカーズなどのアイドルがいました。この時代のアイドルは、アイドルという愛されキャラという面がアーティスト性よりも前面にでていました。サビの部分した音楽は知らないけれど、カワイイやかっこいいという理由だけで部屋に貼ったりしていました。アイドルにはカリスマ性があり、映画女優などと同じく大スターというカリスマ性がありました。
この時代のカリスマ性の中には、キャラクターとしての癒し効果が絶大にあったのです。
90年代に入って、ドリームズカムトルゥー、サザンオールスターズ、ミスターチルドレン、グローブ、ラルクアンシェル、ザ・ブームなどのアーティストが台頭してきます。愛されキャラの面よりも、歌そのもののクオリティーが全面に出ています。X JAPAN、米米clubやGLAY、椎名林檎に代表されるカリスマ性のあるキャラクターを持ったアーチストが注目されました。ファンはカリスマ性や音楽性をまず好きになり、その中で愛されキャラを見出していきます。ビジュアルだけでは難しい時代となっていったのでした。
お笑いブームとゆるキャラブーム
お笑いは90年代に入って、とんねるず、ウッチャンナンチャン、ダウンタウンなどがブームを巻き起こしました。アーティストだけでは癒され切れない、キャラクターとしての愛されキャラがお笑いの中にあったからです。
90年代のアーティストは完成度が高く、芸術性もどんどん高くなりました。一方で、お茶の間で気楽におやつをほおばりながら、ほっと一息しながら、自然に笑えるという面が不足していきます。
お笑いブームがやって来た
アーチストが増える一方で、お笑いは笑いというカリスマ性をもちながら、愛されキャラとしても人々を癒していきます。
お笑いとアイドルと俳優
お笑い芸人の人気、ブームの加速は止まりません。その結果、お笑い芸人も、お笑い路線だけにとどまらなくなります。イケメン芸人はアイドル化していきました。今やお笑い芸人は、アイドル路線だけにもとどまらず、今では大河ドラマ、朝ドラの俳優としても活動領域が広がりました。俳優とお笑い芸人の線引きがなくなってきています。お笑い芸人は3枚目の味のある俳優というポジションにはじまり、名脇役、さらに主演俳優を演じる人もでてきました。お笑い芸人は、愛されキャラだけにとどまらず、人間としてのクオリティーをあげ、アイドル、MC、俳優と人気スタイルに変化していきます。
アイドルの苦悩
お笑いの台頭によって、スターはカリスマ性やビジュアル面だけでは人気が出なくなりました。ビジュアルに加えて、笑いのセンスもあるアイドルがよりカリスマ性を持つようになりました。スマップや嵐もアイドルというカリスマ性だけでなく、バラエティーや俳優となり、個性が強調されます。関ジャニ、TOKIO,キンキキッズに代表されるように、人々はキャラクターとしてのカリスマ性だけでなく、スターの人間性も求めたのです。バンドもアイドルも、アーテイストとしての自発性とともに、ファンにより近い存在。それが人気の秘訣になっていきます。
銀幕の大スターというカリスマ性のあるキャラクターがいなくなった時代
俳優は俳優業だけでなく、CM、ドラマなど多彩に活躍しています。大河ドラマで1つのキャラを築き上げたと思ったら、翌日には違うドラマでもみかけたりします。よりファンに近くなるという親近感という意味ではいい効果を出している一方で、1人の俳優を1つの映画やドラマで固定化し、カリスマ性を見出すことが難しくなる時代をつくっています。
キャラクター重視のアイドルとモデルが登場
俳優、アイドル、お笑い芸人が多様な分野で活躍をする一方で、カリスマ性のあるキャラクターが少なくなっていきます。
そこに台頭してきたのがローラさんに代表されるモデルやAKB48や乃木坂46などのアイドルユニットグループたちです。アニメキャラから生まれたようなキャラクター重視のアイドルの再到来です。
ですがアイドルやモデルも、カリスマ的なキャラクターという記号的な面だけにとどまらず、女優業、MC業、バラエティーに活動をもち、一人一人の個々の個性をだす方向になり個々の人気は上がっていきます。
一方でカリスマ的なキャラクターがいなくなります。
ゆるキャラはカリスマ性を集めた
そんなときに、カリスマ性をもった愛されキャラだけに徹したのがゆるキャラたちです。ただの着ぐるみだといえばそうかもしれません。ですが、そこに息吹をふきこんだのは、カリスマ性のある愛されキャラを欲した人々だと思うのです。
吉本新喜劇は1980年代のお笑いブームの時にブームになりましたが、一旦漫才ブームにおされながらも、ここ数年また再ブームとなっています。人気の秘訣はお笑いのセンスはもちろんですが、それ以外に、キャラクターが確立していることで、ビジュアル的な癒しの効果も相乗されたのではないでしょうか。アイススケーターの羽生結弦君のフィギュアもそうですが、どこかで人々はカリスマ性をもったミーハー的なアイドル的キャラクターをいつも求めているのだと思います。
アーティスト、ゆるキャラ、吉本新喜劇、昔のアイドル。お茶の間の人々は古き良き時代の昔のアイドル、今やダサいとされているにもかかわらず、追い求めているのかもしれません。