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トピック「映画監督」について

岩井俊二監督のMOVIEラボ(NHK)での話だ。ゲストに「そして父になる」、「船を編む」の是枝裕和監督、女優の長澤まさみさん、司会には千原ジュニアさんが出演していた。

 

客席には監督のたまごともいえる新人監督や、これから映画監督になろうとしている人が座っている。1分間MOVIEではこれらの監督たちが作った1分間という短時間の映画を紹介していた。

 

ある女性監督の映画はこうだった。電車の中で座って1人アイフォンをみる女子高校生。アイフォンの中は、ラインの会話だ。母と彼女の会話だ。内容はおばあちゃんが脳梗塞だっただろうか、病気になって、もう長くは生きれないという内容だ。そのラインの内容は、実際に彼女が母から受け取ったラインを使ったそうだ。画面にはそのラインの内容がうつる。彼女が病室へ入ったとき、彼女の父がおばあちゃんの話をひたすら聞くという会話が効果音として流れている。1分間の中では、揺られる電車の中でラインをみている彼女の心境と、実際に彼女が病室に入ってから、おばあちゃんがお父さんと話をする様子。このとき、おばあちゃんは自分が病気だということを一言も言うことはなく、畑仕事の話を明るくしている。だが、体はベッドに横たわり、動くことはできない。元気になっても以前のようには元気に動けないとのこと。

 

番組のKWは「嘘」という言葉のようだ。おばあちゃんが”嘘”をついてまでみんなの前で気丈に明るくふるまう様子を感動作として仕上げたと未来の監督は自分が作った1分間MOVIEについて説明した。彼女の声はふるえていた。その時の状況がよみがえってきたのだろう。会場は感極まっていた。そんな未来の監督に是枝監督はこのようにアドバイスした。

 

是枝監督「ここに、あなたの嘘もほしかったなあ。」

 

未来の監督「・・・そのときは、私、病室でびっくりしてしまって、何もおばあちゃんに声をかけてあげれなかったんです。ただただ、おばあちゃんが嘘をついてまで気丈に明るくふるまっているのが余計に悲しくて。」

 

是枝監督「(そのときの辛い気持ちを乗り越えて)おばあちゃんきっと元気になるよとか、あなたの嘘も入れるとより作品はよくなったんじゃないかな。そうすればより感動的になったんじゃないかな。」

 

なるほど、すごいと思った。確かにこの作品、いろいろなことが1分間に込められているのはわかったが、感動するのはそれをみた人の想像力にまかされている作品なような気もした。もしここに、監督である彼女のおばあちゃんへの嘘(嘘でもいいから退院できるというような希望をもった言葉)があれば、よりまとまりもあり、感動的になっただろう。

 

嘘は事実よりも人を感動させることがある。

 

しかし、普通の人の場合、未来の監督である彼女と同じくおばあちゃんの家族への愛情(嘘)に圧倒されて、自分が”何を言えばおばあちゃんを励ませるのか”まで考える余裕はないだろう。

 

そこで”俳優”が必要になる。

 

普通の人なら出来ないであろう、混乱や心の痛みを感じている状況で、一歩踏み出しておばあさんを勇気づけることが出来るのが役者なのだ。そこには嘘があってはならない。涙を流しながら大丈夫だよと言うのか、涙を超えておばあさんがよくなるということを頑なに信じ込んで、悲しさや不安を一切みせないで明るくいうのか、それは役者でないとわからない。ただ、1つ言えるのはおばあさんが前向きになれるような嘘、つまり現状を打開するような勇気づけが必要になる。これは役者本人にすれば、おばあさんや周囲の人々に本来の自分の気持ちでなく嘘をついていることになる。しかし嘘をつくことが余計に悲しさを生み、映画ではそれが感動をよぶということになるのだ。

 

だが、このMOVIEのコンセプトはおばあちゃんの嘘だ。もし、ここで主人公も嘘をいうと嘘と嘘のバトルになる。おばあちゃんは嘘をついている(無理に元気にふるまっている)ので、その嘘に乗ってきた主人公(おばあちゃん元気で安心したよ。退院したらまた畑仕事頑張れるね。)との壮絶なバトルになるのだろうか。おばあちゃんの嘘を知りながら、主人公も嘘前提で、嘘をつく。女優魂が通じ合うということなのだろうか。

 

 

 

是枝監督、岩井俊二監督は映画にはフィクションとノンフィクションがあり、フィクションでは映画そのものが嘘だと言っていた。是枝監督は「誰も知らない」という映画の監督でもある。子供達が母親に見捨てられて、子供達だけで生活をするという悲惨な胸つまるストーリーだ。是枝監督は、俳優にストーリーをすべて明かさずに、撮影をはじめたのだそうだ。そのとき、母親役のYOUさんには、子供達との最初の生活シーンでは、まだその先に、母親が子供を残していなくなるというストーリーは伝えることなく撮影が行われたと言っていた。ここに、嘘が登場している。だが、この嘘はリアルをもたせるために大切なエッセンスとなっている。YOUさんや子供達がストーリーを知っていたら、この場面、生活している様子はスクリーンを通じて全く違うものになっていただろう。見ている観客は、よりリアルに子供達、母親の感情が伝わる。

 

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