調和と連鎖

ウネオは突然人が倒れるかのような音を耳にする。同時にガラスが床に落ちて割れる音もした。「何があったの?どうしたん?」母が蒼白な顔色を浮かべてキッチンに入ってきた。ウネオが倒れた訳ではなかったので、一安心というところだろうか。実は、人が倒れたかのような音をさせたのは、バナナだった。そう、S字フックにかけていたバナナが落下した音だったのだ。(バナナが床にたたきつけられると、あんな音がするんだ。)ウネオの家のバナナは、鮮度を保つために、キッチンにS字フックでひっかけ、壁にそなえつけられている棚の持ち手にぶらさげているのだった。そうすることで、一週間近く経過したころには、バナナは絶妙な甘味をかもしだしてくれるのだ。しかし、時々、バナナの熟れ時が早すぎるのか、皮が薄くやわらかくなり、突然バラバラと一本のラインだけ革が吊るされた状態で、残りの部分が朝起きたら床に落ちている日もあった。

 

しかし、今日のフローリングに落ちたバナナの落下は違っていた。ドスンというまさに人が倒れたような鈍い音だった。熟れたバナナが落ちる時は、あまり音がしない気がした。どうして新鮮なバナナが落ちたのか、しかも1本ではなく5本まとめて落ちたのか。その理由はS字フックがプラスチックだったからだった。年に1回くらい、プラスチックの洗濯ばさみが折れるように、プラスチックのS字フックも何かの拍子に折れるのだ。確か、去年はバッグにひっかけていたS字フックだったっけなと、お気に入りのコーヒーカップが割れているにもかかわらず、掃除もすぐにせずにそんなことを考えていた。ウネオはまとめてフローリングに落ちた5本のバナナの音を聞いた時、なぜか年に一度くらいテレビのチャンネル合わせの時に、おもわず1分くらい見てしまうプロレスの投げ技を連想したのだった。心地よいたたきつけられ音、バナナたちはたくましいとしみじみ感じたウネオだった。

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